ファンの境界線

 

つい先ほど、マシュマロにてご相談をいただきました。その内容を丸々ここに載せるのはプライバシーに関することかもしれないので、概要だけまとめると

・「迷惑なファン」についてどう思うか

・「迷惑なファン」へのファンサについてどう思うか

という2点。

ここで言う迷惑なファンとは「必要以上に叫んでアピールするファン」であることにします。

 

わたしは質問者さまのご相談の内容を目にした時、ものすごく胸が痛みました。すごくわかる。わたしにも似たような経験をしたことがあったからです。

 

2016年のEXシアター、サマステ ジャニーズキングダム Mr.KING公演のある日。忘れもしない、あの日。

なぜならわたしが初めてひとりでコンサートに行った日だったから。

 

たまたまお友だちに譲ってもらって、どきどきしながらチケットを握りしめて、炎天下の屋上で列に並んでいたのを覚えています。整理番号はだいぶ後半の方でしたが、人並みに流され、だんだんと右に押されていき、気づいた時にはバルコ下にいました。

ふと周りを見渡すと、前方には170cm超えの2人組の女の子が厚底のヒールでそびえ立ち、右側にはカンペを持ったギャル集団、左側にはペンライト数本を片手に持ち生首をぶら下げた量産、後ろにはキャリーケースをそのままもって会場にやってきて、荷物を広げている高校生。誰がみてもわかる、ザ☆地獄絵図でした。

たまたまわたしがたどり着いた場所がバルコの先端のちょうど真下だったらしく、ファンサ厨がひしめき合っていたのです。「迷惑なファン」のテンプレートの詰め合わせを一気にドーン!と見せられて、スニーカーに小さなショルダーバッグという正統スタイルのわたしは一気に萎縮してしまいました。前にそびえ立つ巨人の隙間から背伸びして、やっとステージが見えるような状況。

 

コンサートが始まってからも、ステージにいる間はモニターを見るしかなくて、セットの階段の上に登ってくれている間だけ、やっとこさ姿がちらちら見える状況。その時はコンサートってそんなもんなんだ、と思っていましたが、今考えてみるとなかなかの過酷さでした。そしてMCが始まると、右側にいたギャル集団が紫耀くんのことを「ゴリラー!」と大声で叫び、それに対して反応した紫耀くんが少し怒ったりしていて。それからギャルたちは「ごめんねー!」とまた叫び返したりしていましたが、その後も彼女たちは全く反省している気配はありませんでした。

それからバルコに何度かKINGやJr.たちが来たのですが、もちろん地獄絵図。叫ぶわ飛び跳ねるわ、ファンサもらったら泣き崩れるわ。

もともとわたしはファンサをもらいたいタイプの人間ではないので、すごく興ざめしてしまいました。みんなあの男の子たちの視界の中に何とか入りたいんだと、そのことしか頭にないんだと。周りの迷惑なんて考えちゃいないんです。押し退けようが、足を踏もうが、ペンライトを頭に当てようがお構いなし。そして目立とうと必死にアピールした子たちの中から、ファンサしてもらえる。棒立ちで見上げているだけだったら、彼らの視界には入れないから。様子を見ていた子たちも、終盤のファンサコーナーではみんな必死にアピールしていました。

 

公演後、紫耀くんが歌い踊る姿をみてものすごく充実感があったのと同時に、とても虚しい気持ちが心に残りました。わたしはやっぱりジャニーズのファンをするには向いてないんじゃないかとも思いました。

 

マシュマロの相談にもあった質問者さまのエピソードも、あらかたこんな感じのものでした。(全然ちがったらごめんなさい!)そして質問者さま自身も、わたしのように紫耀くんが笑って、歌って踊っている姿を見るのがただひたすら好きな方なんだと思います。

虚しいし、悲しいですよね。だってこっちは何も悪いことなんてしていないし、むしろ迷惑を被っているのに。なのにそんな人に対して、どうしてファンサしてしまうのか。大好きな人がファンサをしている姿は好きだけれど、同じファンであるにしろ、ルールを破っているその人たちが喜ぶようなことをどうしてするのか。そんな疑問が浮かぶのは当然のことだと思います。

 

でも、すこし別の目線で考えてみてほしい。

もし自分が、アイドルとしてステージに立ち、たくさんのお客さんに幸せを与える立場だったら。もちろん、会場に来ていた全てのお客さんを幸せにしたいと思うでしょう。それがすべてを円滑に進めるための方法であり、アイドルとしてあるべき姿だから。

 

普段触れ合うことができなくて、いつも距離を感じているとファンに言われる。自分だって人間だし、みんな同じ時間を生きているのに。そんなみんなの不安を晴らしたいという気持ちが、わたしなら浮かぶと思う。だって、本当の自分の姿をもっとよく知ってもらいたいし、もっと自分のことを好きになってもらいたい。

そして、ファンに寄り添っていることを伝えられるのは、ファンサという形になるのも無理はない。ファンがアイドルに近づけた、と思うように、ファンの期待に応えることで、アイドルもファンとの距離が近づき、幸せを与えることができた、と思える一番の近道だから。

でも、その時間はごく限られている。イヤモニでスタッフの指示を聞きながら、音楽にのせて歌いながら。人々の視線の中を駆け抜けながら、360度どの方向にもいるファンを幸せにしなければならない。わたしだったら、絶対に全員を幸せにできると、断言する自信はない。だって冷静に考えてみたら、できるはずがない。

一瞬しか眺められないそのブロックの中で、目立とうとしている人たちの間にいる、ルールを守っているあなただけに、確実にファンサをする余裕は誰にもないと思う。だって視界にすら入っていないかもしれないから。ステージの彼らからしたら、見えている景色すべての人たちを幸せにできたと思ってしまうかもしれない。

 

現実的ではないと分かってはいるけど、そうしたい、そうでありたいと信じているのが今の彼らなんだとわたしは思っています。

もともと、彼らがJr.時代コンサートの現場としていたのは1000〜2000人規模が主で、1万人規模のアリーナで単独公演をしたのはデビューコンサートが初めて。600人規模のシアタークリエで生まれ、そこを基盤にファンと触れ合ってきた彼らにとって、ファンサがファンとの距離を縮めるための主な手段になってしまうのは、仕方ないことなのかもしれない。

仕方ないじゃないよ、ふざけんな。その場所にいる人たちが、全員同じお金を払って彼らと共に過ごす「時間」を買っている以上、不平等があってはならない。プロ意識が足りなすぎるのではないか。

そういう意見もあって当然だと思います。すごく真っ当だと思うし、それこそ今の彼らの課題であると、わたしは強く感じています。

だからこそ、彼らはその課題に対して真摯に向き合う必要があると思うし、ファンサとは違う別の形で多くの人を幸せにする方法を考えなければいけない、とも思います。これからドームを目指すアイドルとして、ファンとの関わり方をもう少し変えていかなければならない。

 

正直「迷惑なファン」というのは、どこに行ってもいます。迷惑なファンがもたらした数多くのエピソードは、あらゆるグループのコンサート期間中よく耳にします。それに、3年前にわたしが経験したようなことを、質問者さまが経験してしまっている時点で、何も変わっちゃいないんです。デビューしたばかりで新規が多いからとか、そういう問題じゃない。ずっとずっと昔から、すべてのグループが根底に抱える課題なんです。

じゃあ、その虚しさをどこにぶつければいいのか。

大好きな紫耀くんの顔をみるだけでその時の嫌な思い出が浮かんでしまうのなら、わたしは逃げたっていいと思います。紫耀くんと一度距離をとったっていいと思う。そうすることで誰もあなたを責めないし、バチが当たるわけじゃない。そしてやっぱりどうしても好きだ、会いたい、という気持ちが止まらなくなれば、またファンに戻ったっていいと思います。ずっと好きで、ファンでい続けることは全然義務じゃない。

 

わたしは紫耀くんのことをどうしても嫌いになりたくないので、というか嫌いになろうとしたところで、なれるわけがないと分かりきっているので。紫耀くんが悪者にならない理由を考えます。

紫耀くんは集合体恐怖症だから、一人ひとりのファンの顔をみてファンサすると公言しています。今回の公演ではたまたま、紫耀くんの視界に入れなかったのかもしれない。じゃあ次会ったとき見てもらえるように、自分磨きを頑張ってみようとか。

そしてそこで、あなたが出会った「迷惑なファン」のような存在にならないようにしなきゃいけない。これはとても覚悟と信念が必要だし、はっきり言って慈善活動です。この世は不条理ですから、良いことをする人が不幸を被ることもたくさんあります。でも「彼らにとっても良く、自分にとっても心地よいことをすること」を当たり前にすることで、あなたにきっと何かしらの形で良いことが回り回って訪れるのだと、わたしは信じています。それこそが「徳を積む」ということなのだと。

 

そうするために、わたしは「期待しすぎないこと」が重要だと思います。あらゆることに対して、期待しすぎない。でもそれは決して「諦める」ことではない。

自分の価値観のハードルを少しだけ下げてみるんです。そうすることで、落胆したり失望したりすることは格段に減る。どうしてただの娯楽なんかのためにそんな努力をしなきゃいけないのか、と思う人もいるかもしれないけど、そうすることで生きやすくなると思う。わたしはいつも、そうやって過ごしています。

 

そして、キンプリはいまとても忙しい時期にあります。それぞれが映画ドラマ舞台と、それぞれの個人仕事を抱えながら、アルバムを提げて全国ツアーを周り、新曲のPRも行なっています。みんなレポやなんかではわざわざ言葉にしないけれど、きっと日々の疲れやストレスも計り知れないほどあるでしょう。そんな中で、目の前にいるひとりのファンを幸せにできなかったことは、彼らの責任なのかもしれません。でもどうか、彼らだけを責めないであげてほしい。

とんでもないほどの期待を背負わされ、限りなく高いハードルを用意されている彼らですが、実はまだまだ2年目のひよっこです。それは彼ら自身だって強く感じていることかもしれない。そんな彼らを、どうか、温かく見守ってあげてください。まだまだだなって笑って、受け止めてあげてください。

 

そしてもうひとつ、覚えておかなければいけないのは「迷惑なファン」は誰にでもなり得るということ。

現在、あらゆるファンの迷惑な行動が問題にされていますが、それらが他人事ではないことをすべての人が自覚すること。「迷惑なファン」がすべてやったことかもしれないけど、二度目三度目が起こらないようにするためには、あなた自身、わたし自身を含めたすべての人の理解と意識の改革が必要です。

自分の大好きな人たちが悲しむ顔を見せないために、自分が今できることはなんなのか。当事者が主体的に考えることで、快適でしあわせな空間を作ることができるのだと、わたしは信じています。

 

 

性善説に生きる、自担に甘々なファンの綴る意見で申し訳ありません。でも、今のわたしに言えることはこれくらいです。

質問者さまが、また幸せな出来事に巡り会えることをひたすら心から祈っております。